卵巣がん完全切除に向けた新たなナビゲーター!小さながんでもはっきり見える蛍光試薬を開発
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本研究のポイント
◇卵巣がん治療では、未だに術者の眼と手によってがん組織を識別するため取り残す可能性がある
◇手術前に血管内に投与することで手術中に小さいがんでもはっきりと見える蛍光試薬を開発。
概要
沙巴体育平台大学院医学研究科女性病態医学の福田武史講師はハーバード大学、ジョージア州立大学との共同研究により、近赤外線レーザーを照射することで卵巣がん細胞を手術中に可視化する新しい蛍光色素を開発しました。本成果は、2022年2月23日(ドイツ時間)にドイツ化学会誌である「Angewandte Chemie」誌に掲載されました。卵巣がん治療において手術で病巣を完全に切除することは、治療成績を向上させるための最も重要な因子です。
近年、がんや組織をはっきりと標識することができる蛍光ガイド手術は、腫瘍の局在を明らかにすることで取り残しを減らし、外科的な腫瘍切除成績を向上させる技術として注目を集めています。今回本研究グループは、近赤外領域に蛍光を持つスクアライン色素の化学構造や電荷に修飾を加えることで、高輝度で安定した卵巣がん指向性のある蛍光色素OCTL14の開発に成功しました。OCTL14を卵巣がん腹膜播種マウスモデルに投与したところ、投与24時間後まで1ミリ以下の微小な腫瘍組織を検出し、その蛍光ガイド下での手術では肉眼だけに比べて多数の腫瘍の除去が可能でした。OCTL14は低分子蛍光色素分子であり、比較的簡単、安価に大量合成も可能であり広い臨床応用にも適しています。
この蛍光物質が将来的に認可され、手術に応用されると、産婦人科医による卵巣がんの手術成績を向上させ、女性患者の予後を改善する画期的な新技術となることが期待されます。
研究者からのコメント
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近年卵巣がんの治療は様々な分子標的治療薬の登場により日々進歩しています。しかし治療成績向上に最も大事なことは手術による完全切除です。今回開発した蛍光色素を用いることで、腫瘍の局在をよりはっきりさせることができ、卵巣がんの完全切除の達成を助け、卵巣がん患者の予後を改善することが期待されます。 |
掲載誌情報
雑誌名: |
Angewandte Chemie (IF=15.4) |
論文名: |
Fast and Durable Intraoperative Near-infrared Imaging of Ovarian Cancer Using Ultrabright Squaraine Fluorophores |
著者: |
Takeshi Fukuda, Shinya Yokomizo, Stefanie Casa, Hailey Monaco, Sophia Manganiello, Haoran Wang, Xiangmin Lv, Amy Daniel Ulumben, Chengeng Yang, Min-Woong Kang, Kazumasa Inoue, Masahiro Fukushi, Toshiyuki Sumi, Cheng Wang, Homan Kang, Kai Bao, Maged Henary, Satoshi Kashiwagi, Hak Soo Choi |
掲載URL: |
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.202117330 |
資金?特許等について
本研究は、ハーバード大学医学部/マサチューセッツ総合病院の計画研究の一部として行われました。
? 米国立衛生研究所(R01EB022230)「Image-Guided Drug Delivery for Pancreatic Neuroendocrine Tumor」
? 米国立衛生研究所(R01HL143020)「Nanochelation Therapies for Iron Overload Disorders」
報告された蛍光物質は、研究を主導したハーバード大学医学部/マサチューセッツ総合病院、化学合成を主導したジョージア州立大学により特許出願されております。