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留学レポート(ドイツ ハンブルク大学)

留学をするにあたって誰しも気にすることの1つとして、治安が良いかどうかが挙げられると思います。個人的には、ここ5カ月をハンブルクで過ごしてみて治安が悪いと感じたことはありません。むしろ今までに訪れたドイツの2つの都市、ベルリンとドレスデンよりかよほど良いと感じました。しかし、最近ニュースで大きく取り上げられていたように、ケルンで起きたほどの規模ではないものの、ハンブルクでも大みそかに婦女暴行や傷害といった事件が相次いだようです。ハンブルクで過ごした大晦日は、家にこもっていても外で爆竹や花火の音が鳴り響き(そういうふうにして大晦日を楽しむ習慣があるため。)、日本の大みそかとは違った様相を見せていました。ドイツ人の友人やドイツ在住の日本人の方の話によれば、大みそかには外に出ないようにしているとのことです。それもそのはずで、辺りには酔っ払いや気持ちが高揚している人が多くおり、出かけない方が賢明なように思えました。

次はドレスデンでの治安についてです。ドレスデンはドイツの中で最も大きなクリスマスマーケットのうちの1つであり、クリスマス期間中には人気の旅行スポットです。私も冬休みの期間ドレスデンに行っていたのですが、ある日博物館の展示を見終わりトラムに乗って宿泊先まで帰ろうとしていたところ、多数のパトカーがサイレンを鳴らして目の前を過ぎ去りました。私が向かう方向とは逆方向に去っていったので気にせずトラムに乗り込んで座っていたのですが、トラムが発車して少し経ったところで車掌のアナウンスが流れました。デモが起こっているので数駅停車せずに徐行するとのことでした。トラムの窓から見えたのは、ロシア国旗や赤色でPARTEIと書かれた大きな旗を振っているデモの群衆や、大声を上げながら行列して進む人たち、それを制止しようとしている警察隊の姿でした。今までデモを見たことがない私にしてみれば、とても大きなデモに見えたのですが、現地ではさほど大きなものではないとみなされたのか、後日ネットニュースを見てもそれに関する記述は見当たりませんでした。宿泊先はそこから遠く離れたところにあったので支障はありませんでしたが、出かける前にあらかじめ「行く場所の地名+デモ」でネットで検索し、これから行こうとするところがデモのよく起こる場所なのか否かを調べておく必要を感じました。

さて、宿泊先に帰った私は「ドレスデン+デモ」で検索し、旅行誌には載っていない多くの事を知ることとなりました。それはドレスデンはPEGIDA(=欧州イスラム化に反対する愛国的ヨーロッパ人)の本拠地であり、2015年には数万人規模のデモが数回行われていたということです。また一部の過激な人たちは有色人種というだけで差別をすることもあるそうです。これは差別というほどのものではないかもしれませんが、ドレスデンにいる間、通りすがった人がよく私に向ってChinesinというのが聞こえました。(=ドイツ語で中国人女性の事を指す。ただし通りすがっただけでは、彼らは私が中国人なのか日本人なのか韓国人なのかということは全く見当がついていないため、ここでは広くアジア人女性を指して言っていると思ってください。)通りすがった男性がそう言っていたり、まだ小学生高学年くらいの女の子がすれ違いざまそう言ってくすくす笑っていたり、電車の中で年配の女性がこちらを強い目で睨んでいたりとパターンは様々です。正直言ってショックでした。彼らの中には、私たちが日本で普段何気なく「あの人外国人だね」というのと同じように悪意なく私の事を言った人もいるのだと思います。今まで日本にいて、またハンブルクにいても○○人だと差別化して呼ばれたことがなかったため、この経験は深く印象に残りました。以前、在日の人が私の事を外国人と呼ばないでほしいという旨の手記を読んだことがあるのですが、その気持ちの一端が分かる思いがしました。自分たちが属する共同体とは別の共同体に属する他者を表す語(外国人や○○人など)はナイーブな側面を持つものであり、道端ですれ違いざまにいう程度で用いると、相手に私は差別されているのだろうかと疑念を抱かせてしまったり、寂しい思いをさせてしまったりする性質のものです。こういった言葉に対して鈍感で、今までさほど意識せず使っていたことを深く反省するきっかけになりました。一言付け加えておくと、こういった嫌な思いばかりをするわけではありません。個人的にはドレスデンには閉鎖的な印象を受けましたが、道が分からず尋ねると親切に教えてくれるおばあさんや、屋台で愛想のよい笑顔を見せてくれるおじさんなど優しい人たちもたくさんいます。

話は戻ります。次はベルリンでの治安についてです。気を付けていればどうということはないのですが、ふとした瞬間に怪しい人が寄ってくることがあります。私の場合は、カイザーヴィルヘルム教会という内部が一面青のステンドガラスで覆われた美しい建物があるのですが、そこへ訪れた際スリと思しき人を見かけました。高校生くらいの女の子と小学生高学年くらいの男の子の2人組だったのですが、道行く人に声をかけては慈善活動への署名をお願いしますと言ってサインを求めるものでした。これのどこがスリなのかと思われるのかもしませんが、サインをしているときにはペンと紙を持つことで両手がふさがってしまうため、この間にポケットやカバンから財布等を抜き取られる可能性があります。また、署名を求める普通の人は断ればすぐ引くのに対し、スリの場合は執拗に言い寄ってくるという点が特徴です。私も気を付けていたにもかかわらず、ほんの一瞬目があってしまったということで彼らに話しかけられ、しつこく言い寄られてしまいました。まだ成人していない子がスリをしようとしているところを見るのは複雑な思いです。その場所は人けが多く、また相手がさほど怖くはなかったため大丈夫でしたが、そういうことに会うと予想以上に疲れるので、常に遠くまで周囲に気を配りながら歩く事も重要です。

以上、治安について私が出会ったり思ったりした範囲の事で書きました。スリの手口は、留学の際大学から配られるパンフレット、また旅行書に本当に多様な手口が記載されているので1度目を通しておくだけでかなり参考になると思います。

柴田楓