大阪市大 × 大阪税関
概要
沙巴体育平台法学研究科 平 覚(たいら さとる)教授の研究チームは、大阪税関と共同で「韓国の積極的なFTA戦略の現状と課題―日本の通商戦略への示唆―」と題する研究成果報告書を取りまとめ、公表しました。
同研究チームは、日本と同様に積極的な自由貿易協定(FTA)戦略を展開している韓国における国内実施の問題点を分析?検討するため、現地の関係機関におけるヒアリングおよび大阪税関における共同研究会を実施しました。メンバー各自による個別研究の成果も加え、このたび報告書としてまとめました。
本共同研究は、本学が平成28年6月に大阪税関と締結した包括連携協定※に基づき実施されたものです。大学と税関が包括連携協定を締結するのは全国で初めてで、本協定は、相互に協力連携し、国際貿易の円滑化?活性化に資する研究や人材の育成等を行うとともに、これらの分野で人的?知的資源の交流を図り、地域社会の発展に貢献することを目指しています。
韓国は中小企業でのFTAの利用率が高いため、このような研究は我が国における国際貿易の円滑化?活性化はもちろん、中小企業が多く存在する大阪にとって有益な示唆となることも視野に入れています。
※平成28年6月10日プレスリリースはこちら
研究の背景
我が国では環太平洋経済連携協定(TPP)が注目を浴びていますが、我が国と同様に貿易依存度の高い韓国は、2003年のFTAロードマップ策定以来、積極的なFTA戦略を展開し、多数の2国間または複数国間FTAを締結しており、今後もいわゆるメガFTA?EPA(Economic Partnership Agreement: 経済連携協定)への参加を模索しています。しかし、このようなFTA戦略は、各FTAの貿易待遇の相違により、スパゲティー?ボール現象と呼ばれる貿易環境の複雑化を招き、例えば、通関業務の複雑化や最適なグローバル?サプライ?チェーンの構築の困難化などの問題を生じているとされています。
? 本研究は、韓国のFTA戦略の現状と課題および問題点を分析?検討し、日本の通商戦略および特にFTA?EPA戦略への示唆を得ることを目的としました。そのため、韓国人研究者をメンバーに含む共同研究チームを構成し、韓国の産業界、税関などの行政および研究者へのヒアリングを中心とする現地調査を行いました。
報告書の概要
報告書は以下のような構成になっています。
1.「韓国実地調査(ヒアリング)報告書」
2017年3月にソウル税関、韓国産業経済研究所及び韓国中小企業中央会を訪問。FTAの執行体制とFTA利用率、中小企業が直面している問題点やFTAの利用を促進するための支援策、関税士?原産地実務士?原産地管理士の役割などについてヒアリングを実施した内容を報告。
2.「韓国におけるFTA活用のための方策―中小企業向けの対策を中心に―」
多数のFTA か?併存する複雑な状況下で、中小企業のためのコンピューター?ネットワークを活用した FTA 利用推進策や原産地実務士などの資格制度の拡充により我が国より高いFTA利用率を達成している韓国の実情を分析。我が国への示唆として人的ソースを使った支援が効果的であることを指摘。
3.「韓国の税関行政とその裁量に対する司法審査」
FTAの紛争解決機関やWTO紛争解決機関などの国際的司法機関が、韓国の税関当局の事実認定や法解釈、具体的な措置の適用とその裁量を、どの程度まで踏み込んで審査しうるのか、いわゆる審査基準の問題をWTOの先例などを分析しながら検討。「客観的な合理性」の審査が妥当と結論。
4.「韓欧FTAにおける認定輸出者自己証明制度」
韓国?EU間のFTAは、原産地証明についてもっぱら認定輸出者による自己証明制度のみを採用しており、新世代FTAの中でも先端的制度といえるが、折しも今年7月には日欧EPAが大枠合意されたことも踏まえ、韓欧FTAのこの制度の実情と課題を考察。我が国への同制度の導入にあたっての検討素材を提供。
5.「翻訳『FTA活用企業の必須ガイドBusiness Model 40』(韓国関税庁、2015年)」
韓国関税庁発行のFTA活用事例集から、特に有用であると思われる事例を取り上げ、日本語に翻訳。
報告書公開URL
?本学のWebサイトはこちら
?大阪税関のWebサイト:http://www.customs.go.jp/osaka/news/index00-3.html
【共同研究チームについて】 |
---|